墓じまいとは？意味・背景・手続き・費用までやさしく解説

墓じまいとは？意味と背景をわかりやすく解説

ただ墓石を片づけるだけではなく、納められているご遺骨を取り出し、新たな供養先へと移す「改葬（かいそう）」の手続きまでを含む行為を指します。

近年では、「自分の代で整理しておきたい」「子どもに負担をかけたくない」「遠方すぎて管理できない」といった理由から墓じまいを選ぶ方が急増しています。厚生労働省のデータでも、改葬件数はこの10年で数万件規模で増加しており、もはや“特別なこと”ではなく、“現代の終活のひとつ”として一般的な選択肢となりつつあります。

本来、日本の伝統的なお墓は「家」を単位に代々継承するものでした。「◯◯家之墓」という形式が一般的で、長男が引き継ぎ、家族や親族のご遺骨をひとつのお墓に納め、管理していく考え方が主流でした。ところが、少子高齢化や核家族化の進行により、その継承モデルが成立しづらくなっています。たとえば、子どもが遠方に住んでいる・海外で暮らしている・そもそも子どもがいないといった事情があれば、従来のお墓の形は大きな負担になってしまいます。

また、現代は「供養のかたちは一つではない」と考える人が増えてきました。たとえば、永代供養墓や納骨堂、樹木葬、散骨、手元供養といった新しい選択肢が登場し、「無理にお墓を維持しなくても、想いはしっかり伝えられる」という価値観も広まりつつあります。

さらに、問題視されているのが「無縁墓（むえんぼ）」の増加です。お墓の継承者がいなくなると、管理費の滞納や雑草・ゴミの放置、墓石の倒壊といった状態に陥り、墓地全体の環境悪化を招く恐れもあります。これを防ぐために、あらかじめ自ら墓じまいを選ぶことで「ご先祖様への責任をきちんと果たす」という思いから動く方も少なくありません。

墓じまいは、単なる整理整頓ではありません。ご先祖様の供養をこれからどう続けていくか、自分たちの死後に子どもや親族が困らないよう、どのように負担を減らすかを考える行為です。終活の一環として墓じまいを考えることは、単に「お墓をやめる」ことではなく、「これからの供養のかたちを家族で見つめ直す」という前向きな決断でもあるのです。

墓じまいが必要になるケースとは？

墓じまいは、人生のステージや家族構成、住まいの状況など、さまざまな事情によって必要になるケースがあります。

ここでは、実際によく見られる代表的な理由を紹介します。

跡継ぎがいない、または今後の継承が不安な場合

お墓は長い年月をかけて先祖から受け継がれてきたものですが、「自分の代でお墓を継ぐ人がいない」と感じたとき、多くの方が墓じまいを検討します。独身で子どもがいない方や、子どもがいても海外や遠方に住んでいて将来的にお墓を守れそうにない場合、無縁墓になるリスクを避けるため、元気なうちに整理を決断されるケースが増えています。

また、子どもがいても「お墓を継いでくれ」と強制したくない、「負担をかけたくない」と考える親世代も少なくありません。その結果として、墓じまいを終活の一環として前向きに選ぶ方が増えているのです。

お墓が遠方にあり、管理やお参りが困難な場合

お墓が実家近くや故郷にある場合、現在の住まいから離れていると、頻繁にお参りや掃除に通うのが難しくなります。特に高齢になると、体力や移動の負担が重くのしかかってきます。交通費や宿泊費も無視できず、「自分の死後、子どもがこの距離を通い続けるのは現実的でない」と感じ、墓じまいを選択する方が増えています。

都市部への移住や転勤、結婚による転居など、ライフスタイルの変化がきっかけとなって、お墓を移す＝墓じまいをするという流れにつながることも多いです。

継承を前提としない供養方法を選びたい場合

現代では、必ずしも「家のお墓」にこだわらず、自分らしい供養の形を求める方が増えています。永代供養墓や樹木葬、納骨堂、散骨、手元供養など、継承者がいなくても安心して供養できる選択肢が広がっているため、「あえてお墓を持たない」という決断に至ることもあります。

こうした選択肢を検討する際には、既存のお墓をどうするかという問題が出てくるため、墓じまいは自然な流れとして必要になります。

子世代と話し合った結果として選択する場合

墓じまいは、親だけで決めるものではありません。多くの場合、子ども世代との話し合いを通じて「お墓は不要」「無理に守らなくていい」「別の形で供養しよう」といった意見が出て、双方が納得したうえで墓じまいが選ばれます。

特に近年では、子ども側から「お墓を引き継ぐのは難しい」「自分たちの時代で新しい供養の方法に変えたい」と提案されることも珍しくありません。このように、家族全体での意思決定が、墓じまいの大きなきっかけになるのです。

このように、墓じまいが必要になる背景は人それぞれですが、いずれのケースも「家族への想い」や「先を見据えた判断」が根底にあります。自分や家族の状況に照らし合わせて、最適なタイミングと方法で選択することが大切です。

墓じまいの手順を7ステップで解説

墓じまいを進めるには、いくつかの行政手続きや宗教儀礼が必要です。感情面だけでなく法律・書類・現場作業なども関わってくるため、全体の流れを把握したうえで丁寧に進めることが大切です。ここでは、終活を考える方やそのご家族の目線で、墓じまいの流れを7つのステップに分けて詳しく解説します。

1. 親族の同意を得る

まず最初に行うべきなのは、親族全員との話し合いです。お墓には複数のご遺骨が納められていることも多く、関係する親族が複数いる場合もあります。「お墓は残すべき」と考える方がいる可能性もあるため、後々のトラブルを避けるためにも、全員の合意を得てから進めることが基本です。

このとき、「なぜ墓じまいをしたいのか」「今後の供養はどうするのか」といった点を丁寧に説明し、同意書や覚書を作っておくと安心です。

2. 墓地管理者へ連絡し、必要書類を取得する

次に、現在のお墓がある霊園や寺院などの管理者に墓じまいの意思を伝えます。この際、丁寧な説明とお礼の気持ちを忘れずに伝えることが円満な手続きのコツです。

管理者からは、後の改葬手続きに必要となる「埋葬証明書（埋蔵証明書）」を発行してもらいます。これは、ご遺骨がその墓地に納められていたことを証明する重要な書類です。

寺院墓地の場合は、檀家を離れることになるため「離檀料」が発生することがあります。金額に決まりはありませんが、5万〜20万円が目安です。

3. 改葬先（ご遺骨の移転先）を決める

墓じまいをするということは、納められていたご遺骨を別の場所へ移す必要があります。これを「改葬」と呼びます。移転先としては、以下のような選択肢があります。

• 永代供養墓（寺院や霊園が供養を代行）
• 納骨堂（屋内型の墓所）
• 樹木葬や合祀墓（費用を抑えたい方に人気）
• 散骨や手元供養（形式にこだわらない供養）

移転先が決まったら、その施設から「受入証明書」を発行してもらいましょう。これも改葬手続きに必要な書類です。

4. 改葬許可証を自治体から取得する

墓じまいでは、ご遺骨を移動させる前に役所での手続きが必要です。現在の墓地がある市区町村に対して、「改葬許可申請書」を提出し、「改葬許可証」の発行を受けます。

必要な書類は以下の3点です。

• 改葬許可申請書（自治体により書式あり）
• 埋葬証明書（現在の墓地管理者から取得）
• 受入証明書（新しい納骨先から取得）

散骨や自宅での手元供養を選ぶ場合も、自治体によっては改葬許可証を求められることがありますので、事前に確認しておくと安心です。

5. 閉眼供養を行い、ご遺骨を取り出す

改葬許可証を得たら、実際にご遺骨を取り出します。この際に欠かせないのが「閉眼供養（魂抜き）」です。お墓に宿る故人の魂を抜いてもらう儀式で、お寺に依頼するのが一般的です。

閉眼供養のお布施の相場は2万〜5万円程度。これまでのお付き合いの深さや地域の風習によって異なりますので、事前に確認しておくとよいでしょう。

6. 墓石の撤去と整地作業を行う

ご遺骨を取り出した後は、墓石を解体・撤去し、墓地を更地に戻します。作業は専門の石材業者に依頼するのが一般的で、1㎡あたり10〜15万円が相場です。墓地の立地条件（山中・斜面・狭小通路など）によっては追加費用がかかることもあります。

また、悪質な業者による不法投棄などのトラブルを避けるためにも、必ず「産業廃棄物処理の資格」を持った信頼できる業者に依頼することが大切です。

7. 新しい供養先で納骨・供養を行う

最後に、ご遺骨を新しい場所に納めます。改葬許可証を提出したうえで、施設と相談しながら納骨日程を調整しましょう。新しい墓所での「開眼供養（魂入れ）」を行う場合もあります。開眼供養のお布施の相場も、閉眼供養と同じく2万〜5万円程度です。

樹木葬や合祀墓では納骨式が簡素になるケースもありますが、納骨後も定期的に供養が行われることが多く、安心してお任せできます。

このように、墓じまいは思い切った決断だけでなく、具体的な準備と手続きが必要です。一つひとつのステップを丁寧に進めることで、ご先祖様への感謝を形にし、家族の将来にとっても納得のいく供養の形を築くことができます。

墓じまいにかかる費用の内訳と相場

墓じまいにかかる費用は、「墓石の撤去費用」だけではありません。閉眼供養や書類の手続き、ご遺骨の移動、新たな供養先の契約など、さまざまな費用が発生します。ここでは、費用の内訳ごとに目安となる相場を詳しくご紹介します。全体像を把握しておくことで、予算計画もしやすくなります。

墓石の解体・撤去費用

墓じまいでもっとも大きな割合を占めるのが、墓石の解体・撤去と整地費用です。相場は1㎡あたり10万〜15万円程度ですが、墓所の立地や作業条件によって上下します。

【費用が高くなりやすいケース】

• 重機が入れず、人力作業が必要な場所
• 墓石が大型で量が多い
• 墓所が山間部や斜面にある

また、墓石は産業廃棄物として適切に処分する必要があるため、極端に安価な業者には要注意です。不法投棄などのトラブルを避けるためにも、行政認可のある信頼できる石材店に依頼することが重要です。

閉眼供養（魂抜き）とお布施

お墓に宿る魂を抜く儀式が「閉眼供養」です。僧侶に読経を依頼するのが一般的で、お布施の相場は2万〜5万円程度とされています。

宗派や地域によって金額感に違いがありますが、「気持ち」として包むものであり、明確な料金表があるわけではありません。迷う場合は、親族や過去に経験した知人に相談するのも一つの方法です。

離檀料（寺院墓地の場合）

寺院が管理する墓地では、檀家を離れる際に「離檀料」を求められることがあります。これは法的に義務づけられたものではなく、お世話になったお寺への感謝の気持ちとして支払う慣習です。

相場は3万〜20万円程度と幅があり、長年の関係性や地域によって異なります。中には高額な離檀料を請求される事例もありますが、金額に疑問がある場合は専門家への相談も検討しましょう。

書類取得にかかる手数料

墓じまいには、役所や管理者から以下の書類を取り寄せる必要があります。

• 埋葬証明書（埋蔵証明書）
• 改葬許可申請書
• 受入証明書（新しい納骨先から）

これらの書類には、1通あたり数百円〜1,500円程度の手数料が発生します。数は多くありませんが、必要な書類を正しく揃えることがスムーズな手続きの鍵となります。

ご遺骨のメンテナンス費用（洗骨・粉骨など）

長年お墓に納められていたご遺骨には、土や湿気の影響で汚れや傷みが生じている場合があります。新しい納骨先に移す前に、以下のような処置を行うことがあります。

• 洗骨（1体あたり2万〜3万円）
• 粉骨（1体あたり1万〜2万円）
• 再火葬（土葬の場合、約3万円）

これらは必須ではありませんが、衛生面やスペースの関係で勧められることもあります。納骨先のルールを確認し、必要であれば事前に見積もりを取りましょう。

新たな納骨・供養にかかる費用

墓じまい後のご遺骨の供養先として選ばれる方法によって、費用も大きく異なります。以下に代表的な例と相場をご紹介します。

新たに墓石を建立する場合は、100万円以上の出費になるケースもあります。永代供養や合祀を選べば費用を抑えられますが、ご家族の意向や宗教観も踏まえて決定することが大切です。

全体の費用感としては、30万円〜100万円程度が一般的な墓じまいの予算帯とされています。選択する供養の形や墓地の状況によって大きく前後するため、事前に見積もりを取り、必要な費用を把握しておきましょう。

「何にどれだけかかるのか」を明確にすることで、家族との相談もしやすくなり、納得のいく墓じまいにつながります。

墓じまい後の供養方法

墓じまいをした後、ご遺骨をどのように供養するかは、多くの方にとって大きな悩みのひとつです。「お墓がなくなる＝供養が終わる」ということではありません。現代では、多様なライフスタイルや価値観に合わせた供養方法が増えており、それぞれにメリットと注意点があります。ここでは、代表的な供養方法7つをわかりやすく紹介します。

一般墓への改葬

現在のお墓が遠方であったり、管理が難しい場合には、住まいの近くの墓地にご遺骨を移す「改葬」がおすすめです。従来通りのお墓の形式を保ちながら、通いやすく管理しやすい環境で供養を続けることができます。

【特徴】

• 自宅から近く、定期的なお参りがしやすい
• 親族で代々受け継ぐことができる

【注意点】

• 墓石の建立や永代使用料など、初期費用が高くなりがち
• 継承者が再び必要になる可能性がある

納骨堂

都市部を中心に人気が高まっているのが、屋内施設にご遺骨を預ける「納骨堂」です。ロッカー型・仏壇型・自動搬送型など形式は多様で、天候に左右されずにお参りできる利便性が魅力です。

【特徴】

• 雨や暑さを気にせず快適にお参りできる
• 駅近などアクセスの良い場所が多い

【注意点】

• 管理費がかかる場合がある
• ご遺骨の収蔵期間に制限がある施設もある

永代供養墓

お寺や霊園が代わって永続的にご供養してくれる「永代供養墓」は、継承者がいない方に選ばれることが多い供養方法です。個別に安置するプランと、一定期間後に合祀されるプランがあります。

【特徴】

• 管理の手間がかからない
• 供養は寺院などが継続的に実施してくれる安心感

【注意点】

• 合祀後はご遺骨を取り出せなくなる
• 家族や親族の同意が必要な場合がある

樹木葬

自然志向の方から支持されているのが「樹木葬」です。墓石の代わりに木や草花の下にご遺骨を埋葬する方法で、自然と一体化するような供養スタイルです。

【特徴】

• 自然に還るという理念に共感する人が多い
• 継承不要で費用も比較的抑えられる

【注意点】

• 一度埋葬すると取り出せないケースが多い
• 埋葬場所の指定ができないこともある

合祀墓（共同墓）

費用をできるだけ抑えたい方には、「合祀墓」も選択肢のひとつです。ほかのご遺骨と一緒に埋葬される形式で、個別の墓石や管理は不要です。

【特徴】

• 永代供養つきで費用が安価
• お墓の管理・維持が不要

【注意点】

• ご遺骨を個別に取り出すことはできない
• 匿名性が高く、場所の特定が難しいこともある

散骨

ご遺骨を自然へ還す「散骨」は、形式にとらわれない自由な供養方法として注目されています。海洋散骨・山林散骨・宇宙葬など多様なスタイルがあります。

【特徴】

• お墓を持たず自然に還るという考えに合致
• 管理費・継承者の心配がない

【注意点】

• 散骨には粉骨が必要で、別途費用がかかる
• 法律上の規制や、周囲への配慮が必要
• 手元に遺骨が残らない寂しさを感じることも

手元供養

ご遺骨の一部や遺灰を自宅に置き、小型の骨壷やアクセサリーに納めて供養する「手元供養」も人気が高まっています。気持ちの整理がつくまでの一時的な方法として選ばれることもあります。

【特徴】

• いつでもそばで故人を感じられる
• 費用を抑えやすい

【注意点】

• 家族の理解が必要
• 自分が亡くなった後の対応も考慮する必要がある

どの供養方法が最適かは、ご家族の考え方や生活スタイルによって異なります。大切なのは、「お墓がなくなること＝供養をやめることではない」と理解することです。想いのこもった新たな供養の形を選ぶことで、ご先祖様とのつながりはこれからも続いていきます。後悔のない選択ができるよう、それぞれの特徴を比べて、心から納得できる方法を選びましょう。

墓じまいでよくあるトラブルとその防止策

墓じまいは、ご先祖様への供養を大切にしながらも、現実的な負担を減らすための前向きな選択です。しかし実際に進める中で、親族間の対立や予期せぬ出費、業者とのトラブルに直面することも少なくありません。ここでは、墓じまいでよくある3つのトラブルとその防止策を具体的に解説します。

親族間で意見が合わない

【主な原因】

• お墓は代々守るべきという意見
• ご遺骨の移転先や供養方法に対する価値観の違い
• 費用負担の分担が不明確

【防止策】
まず大切なのは、「全員の納得を得る姿勢」です。墓じまいを決断する前に、関係者全員に事情を丁寧に説明し、同意を得る時間を設けましょう。

「なぜ墓じまいを考えたのか」「その後の供養はどうするのか」といった具体的な計画を提示し、感情ではなく事実をもとに話し合うことが重要です。必要であれば、書面にして「覚書」として残しておくことで、後の誤解や争いを防ぐことができます。

また、費用分担についても曖昧にせず、初めから話し合っておくとスムーズです。

管理者との交渉がうまくいかない

【主な原因】

• 離檀料をめぐるトラブル
• 寺院側の理解が得られない
• 管理者が不明確な場合の手続きの混乱

【防止策】
お墓が寺院にある場合、檀家を離れる際には「離檀料」が発生することがあります。これは法的な義務ではなく、これまでのお礼として渡す慣習です。ただし、中には高額な離檀料を求められるケースもあり、トラブルの原因になることがあります。

交渉の際は、いきなり墓じまいの話を切り出すのではなく、先に感謝の気持ちと事情をしっかり伝えましょう。「子どもに負担をかけたくない」「無縁墓にならないよう整理したい」といった理由は、理解を得やすくなります。

それでも難航する場合は、地域の石材店や行政書士、宗教者など、第三者の専門家に同席してもらうことで、円滑に進められることがあります。

また、墓地の管理者がわからない場合は、墓地がある市区町村の役所に相談すれば、手続き方法を案内してもらえます。

業者とのトラブルや不法投棄

【主な原因】

• 見積もりの内容が不明瞭
• 業者が必要な許可・資格を持っていない
• 墓石を適切に処分せず不法投棄される

【防止策】
墓石の解体や撤去作業は、専門知識と技術を要します。安さだけで業者を選ぶと、作業の質が低かったり、墓石を不法に投棄されるといった深刻な問題につながることもあります。

業者を選ぶ際には、以下の点を必ず確認しましょう。

• 「産業廃棄物収集運搬業」の許可を持っているか
• 過去の施工実績や口コミは良好か
• 書面による見積もりがあるか（撤去範囲・整地作業・処分費用などが明記されているか）

また、解体後の様子を写真で報告してもらうよう依頼するのも一つの手です。現地に行けない場合でも、作業がきちんと行われたかを確認できます。

墓じまいは人生の節目において大きな決断となりますが、事前にトラブルの可能性を知っておくだけで、安心して進めることができます。親族、管理者、業者との信頼関係を大切にしながら、後悔のない選択をするための準備を整えておきましょう。

墓じまいを後悔しないために大切なこと

墓じまいは、お墓の撤去やご遺骨の移転といった物理的な手続きだけでなく、「大切な人をどう供養していくか」という心の問題とも向き合う必要があります。実際に墓じまいを終えた方の中には、「もっと準備しておけばよかった」「別の方法も検討しておけばよかった」と後悔の声を漏らすケースもあります。ここでは、後悔しないために押さえておきたい3つのポイントを解説します。

心の整理をしてから決断する

墓じまいは、ご先祖様や亡くなった家族との絆を見つめ直す機会でもあります。合理的な理由があっても、「お墓をなくすこと」に対して抵抗や不安を抱く方は少なくありません。「ご先祖様に申し訳ない」「気持ちの区切りがつかない」といった心の揺れは、ごく自然な反応です。

大切なのは、自分自身の中でしっかりと気持ちの整理をつけたうえで、納得のいく決断をすることです。たとえば、ご遺骨の新しい供養先について調べたり、実際に見学に行ったりすることで、「きちんと供養は続けられる」という安心感が得られます。

また、宗教的な意味での「閉眼供養」や「開眼供養」などの儀式を丁寧に行うことで、精神的な区切りがつきやすくなる方もいます。

「供養の形は変わっても、想いは変わらない」と理解する

墓じまいをすると、お墓という“形”がなくなるため、「本当にこれでよかったのだろうか」と不安に感じる方もいます。しかし、供養とは必ずしも墓石の前で手を合わせることだけを指すわけではありません。

ご遺骨を永代供養に預ける、樹木葬で自然と共に眠ってもらう、自宅で小さな骨壷を大切に保管して手を合わせる――。現代には、さまざまな供養の形があります。重要なのは「故人を想う気持ちを、どんな形で持ち続けるか」です。

「形が変わること＝供養をやめること」ではありません。むしろ、ご家族の暮らしや想いに合った形で続けていくことこそが、現代の供養の在り方といえるでしょう。

専門家に相談することで不安を取り除く

墓じまいには行政手続きや宗教的儀礼、さらには金銭的な準備まで、多くの要素が絡みます。初めてのことで不安に感じるのは当然です。そのまま独断で進めてしまうと、後から「もっと良い選択肢があった」「不必要な費用がかかった」と後悔する原因になりかねません。

そのため、できるだけ早い段階で、石材店・霊園管理者・寺院・行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。費用の相場や手続きの流れ、自分に合った供養方法など、第三者の視点でアドバイスを受けることで、冷静に比較・検討ができるようになります。

また、最近では「墓じまい専門サービス」や「無料相談窓口」も増えており、気軽に相談できる環境が整いつつあります。複数の業者から相見積もりを取って、納得できる依頼先を選ぶのも大切な準備の一つです。

墓じまいは、単なる“お墓の撤去”ではありません。それは、ご先祖様への想いを大切にしながら、自分と家族のこれからを見つめ直す、人生の節目でもあります。十分な準備と心構えがあれば、きっと「やってよかった」と思える選択になるはずです。